手術室看護師には、器械出しと外回りの大きく2つの役割がある。中でも前者は覚えることがたくさんあり、一瞬のミスが患者の命に関わるので、とても緊張感がある仕事だ。担当は一つではなく、心臓血管外科や婦人科・眼科など、外科が関係するすべての診療科を受け持たなければいけない。同じ診療科の手術でもやり方はさまざまで、使用する器具も異なってくる。また、診療科が変われば器具の呼び名も違うことがあるので、間違わないようにしっかりと把握しておかなければ重大なミスに繋がる。
覚えることは膨大だが、暗記だけに頼っていると手術室では成長しない。手術中は医師が指示を出すが、進行をしっかり見て次に何が必要なのかを予測していないとパニックになることがある。例えば、開腹手術の時に医師がはさみと言った場合、複数の種類のハサミの中から医師が必要としているものをすぐに手渡さなければいけない。名前を言ってもらえればすぐに分かるが、スーパーメッツェンなど丁寧に器具の名称を言う医者はあまりいないのである。
器械出しは、器具の名前や使用目的・手術がどのように進行していくかを頭の中にたたき込むのはとても重要な事である。ただ、これはあくまで基礎となる部分で、実際の現場では医師の手術の進み具合を把握しながら、指示が出る前に次は何の器具が必要なのか分かるようになることが望ましい。暗記に頼らずに臨機応変に仕事をするには、たくさんの経験を積まなければいけないのである。しかし、手術室での経験を積むことで立派な看護師へ成長することが出来るだろう。

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